よみ:けんちくぶつしょうえねほう
「エネルギーの使用の合理化に関する法律(以下「省エネ法」という。1979(昭和54)年制定)」に基づいて行なわれてきた省エネルギー(以下「省エネ」)施策のうち、建築物に関する部分について、わが国のエネルギー消費量の3分の1を建築物関連が占めること、および2013年の東日本大震災を経て一層エネルギーの使用の改善を図る必要が明らかになったことに鑑み、特に建築物について省エネ性能の向上を図り、抜本的な対策を行なうため、大規模な建築物について新築時等における省エネ基準への適合義務を課す等の措置を定めた法律。2015年7月に公布され、2017年4月(一部は2016年4月)に施行された。制定時の名称は、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」であったが、2022(令和4)年改正(「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」による改正)により、「向上」の後に「等」が追加された。
同法に規定されている主な措置は、次の通りである。
1. 建築主に対する規制措置
(1)建築物省エネ法においては、一定規模以上の非住宅建築物について、届出義務を課していたが、本法施行により、省エネ基準(一次エネルギー消費量に関する基準)への適合が義務付けられた。さらに、2022(令和4)年改正により、原則として、住宅を含むすべての建築物に対して省エネ基準への適合が義務付けられた(2025(令和7)年4月施行)。
(2)建築主は、建築基準法第6条の建築確認の手続きの際に、「建築物エネルギー消費性能確保計画」を作成し、(1)の省エネ基準の適合について、所管行政庁の判定(建築物エネルギー消費性能適合性判定)を受けなければならない。
(3)住宅事業建築主が供給する建売戸建住宅や注文住宅に関する省エネ性能の向上のために省エネ基準を超える水準の基準(住宅トップランナー基準)を定め、一定戸数以上の住宅を新築する事業主に対して、努力義務を定め、必要に応じて、省エネ性能の向上を勧告することができることとする。2022(令和4)年改正により、分譲型住宅のトップランナー制度の対象を、分譲マンションにも拡大することとなった(2023(令和5)年4月施行)。
2. 省エネ性能向上計画の認定
建物の新築および省エネ性能向上のための改修等に当たって、省エネ性能向上計画を作成し、誘導基準に適合するなどの認定を受ける制度を定める。また、認定を受けた場合には、容積率の特例を適用することとする。
3. エネルギー消費性能の表示
建築物の所有者が、その所有する建築物について省エネ基準に適合する旨の認定を受け、エネルギー消費性能を表示する制度を定める。2022(令和4)年改正により、2024(令和6)年より販売・賃貸の広告に省エネ性能を表示する制度がスタートすることになった。
4. 建築物エネルギー消費性能判定機関等の登録
建築物の省エネ基準等への適合を判定する業務を実施する機関または建築物のエネルギー消費性能を評価する業務を実施する機関が、それぞれ、国土交通大臣の登録を受ける制度を定める。登録を受けた機関は、それぞれ、「登録建築物エネルギー消費性能評価判定機関」または「登録建築物エネルギー消費性能評価機関」として、建築物省エネ法に基づく判定または評価の業務を実施できることとする。
5.建築物再生可能エネルギー利用促進区域制度の創設
太陽光発電設備などの再生可能エネルギー利用設備の導入促進のため創設された(2022(令和4)年改正、2024(令和6)年4月施行)。市町村が促進計画を作成・公表することで、区域内には、建築士から建築主に対する再生可能エネルギー利用設備についての説明義務や建築基準法の形態規制の特例許可などが適用される。