よみ:ちょうぼう
遠くを見渡した眺め、あるいは見晴らしであるが、豊かな自然風景やまち並み風景など、良好な眺望は一定の社会的・経済的価値を持ち、不動産取引にとっても重要なものと考えられる。特にタワーマンションやタワーオフィスなど、高層建築物にとって眺望が大きな価値を持つため、大規模な不動産開発にとって、眺望の持つ意味はますます重要になってきている。
この眺望に、法的な利益を認められるか、眺望権として行使できるかが問題となる。
例えば日照権は、人の心身の健康に直接関わることが認められているため、建築基準法における日影規制や斜線制限で保護されているなど、法的に保護されるべき地位が確立している。それに比べると眺望権は、特別法による根拠を持たないため、仮にある土地所有者の建築行為が他者の眺望の利益を侵害したとしても、都市計画等の規制を遵守した上で行なう建築行為であれば、土地の所有権に基づく行為として優先されることになり、原則として眺望権を保護することは困難である。
しかし、その眺望の利益が社会的に認められるほどの重要性を持っていることや、眺望権の侵害が受忍限度を超えていること、眺望の利益を侵害する側に何らかの違法性がある場合等に、裁判又は事実上の対応として損害賠償請求や契約解除が可能となった事例がある。
また、眺望は、宅地建物取引業法第35条の重要事項説明の対象ではないが、マンション等の不動産購入の動機のひとつでもあるため、購入後に他者の建築行為により眺望が侵害され、売主である不動産業者等とトラブルになるケースもある。事前に十分に説明しているかどうか、近い将来眺望が阻害されるような建築行為があることを業者側が知っていたかどうかなどが後に問題となり、損害賠償や売買契約の解除などが認められたこともある。